日本有機地球化学会

会長の挨拶

 本学会の歴史は,1972年に日本地球化学会の夜間小集会で設立した「有機地球化学談話会」に始まります.その後,1985年に「有機地球化学研究会」,2002年に「日本有機地球化学会」と名称変更し,今日に至っています.この間,約45年の年月が流れ,有機地球化学を取り巻く社会環境は大きく変化してきました.大気二酸化炭素濃度や有機エアロゾルにまつわる諸問題,シェールガスなどの非在来型石油資源の台頭,海洋・極限環境での生物有機地球化学の新展開,そして,国際深海科学掘削計画(IODP)や大宇宙を舞台にしたサンプルリターン計画など,有機地球化学の活躍の場は益々拡大しています.一方,有機物分析や質量分析に関する技術は革新的に進歩しており,超高感度・超高分解能分析技術によって,有機地球化学は新たな領域に入りつつあります.人類の知的な欲求を満たすだけではなく,人類の生存を支える学問として,有機地球化学はしっかりと根を生やしてきたのではないかと思います.
 本学会の正会員の多くは,地球惑星試料や環境試料に含まれる有機物質に注目して,化学,地球・宇宙科学,生物科学を横断する研究教育や企業活動に携わっています.有機物質をコアにして,多様な会員と身近にディスカッションできるのも本学会の魅力の一つではないでしょうか.学生会員は,本学会の活動を間近に見ることで,将来の進むべき道について多くのヒントを得ることができるはずです.新装なった学会誌,Researches in Organic Geochemistry (ROG) は,オープンアクセスによって会員の研究成果を広く発信しています.現在,本学会として「地球・環境有機分子質量分析マニュアル」を作成しており,間もなく完成する予定です.これは,経験豊富で多様な会員が力を合わせることで初めて実現できることです.これからも,本学会ならではのユニークな活動を世界に発信し,学問の発展に貢献したいと思います.世界の時間的距離が大きく短縮し,情報伝達速度は飛躍的に高まりました.今後は,国際交流を積極的に進めて,本学会のグローバル化を進めてゆかなければなりません.  有機地球化学は,生命が関与した有機物から,非生物的な有機物まで,多様な炭素化合物に関する学問分野です.地球の大深部から,海洋,大気,そして大宇宙の彼方まで,あらゆる場所に炭素化合物が存在しています.このような炭素化合物に関心のある研究者,教育者,企業人,学生が集い交わる場として,日本有機地球化学会は発展を続けています.新たな会員を迎えて裾野を広げながら,有機地球化学の新時代を築きたいと望んでいますので,今後とも,皆様のご理解とご協力をお願いいたします.

北海道大学大学院・理学研究院・鈴木徳行(2016年1月)

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