刊行物
特集号のお知らせ
2010年12月発行の26号および2011年9月発行の27号の特集企画について
「有機化合物の安定同位体比を用いた有機地球化学的研究の発展とその応用」
力石嘉人1・大場康弘2
1独立行政法人海洋研究開発機構 海洋・極限生物圏領域
〒237-0061 神奈川県横須賀市夏島町2-15
2北海道大学低温科学研究所
〒060-0819 北海道札幌市北区北19条西8丁目
有機地球化学では,アーキア・バクテリアから高等植物・動物に至る多種多様な生体試料,土壌・堆積物・堆積岩といった地質学試料,石炭・石油などの化石燃料,さらには炭素質隕石などの地球外物質を研究対象として扱い,それらに含まれる有機化合物(とくに,バイオマーカーと呼ばれる特定の生物・生物群に特有な有機化合物や,生物体の基礎となるアミノ酸など)の種類や分布,また,試料全体の,あるいは個々の有機化合物の軽元素(水素・炭素・窒素・酸素・硫黄)安定同位体比を解析している。そして,生命の起源,水素・炭素・窒素などの生元素の地球化学サイクル,石油・石炭などの化石燃料の生成・蓄積メカニズム,過去〜現在における地球環境変動とその要因,将来の気候変動の予測,また,それらの変化・変動が生物生態系や地球環境にどのような影響を与えるのか,などの地球科学の様々な研究課題に対して多くの化学的知見を提供している。
特にこの数年では,従来は有機地球化学分野の研究でのみ用いられてきたような有機化合物や安定同位体比の解析法が,生物学・生態学・考古学などの学術分野や,さらには食品・医療・製薬・科学捜査・スポーツ(ドーピング検査)などにおいても,様々な問題をクリティカルに解き明かすことのできる主要ツールとして利用されるようになり,有機地球化学的研究と我々が用いている研究手法の重要性が広く認識されるようになった。
このような最近の進展を踏まえて,本特集では,化合物レベルの安定同位体比分析(Compound-specific Stable Isotope Analysis: CSIA)を用いた最近の研究成果を中心に,有機化合物の分布や組成,試料全体の安定同位体比を複数元素で解析したマルチ同位体比解析などの先端的な有機地球化学的,およびその応用研究についての研究論文をまとめた。有機地球化学の今後のさらなる発展だけでなく,関連学術分野や一般社会へのアウトソーシングという意味でも,本特集が多くの読者に少しでも有用な情報を提供するものになれれば幸いである。
会員以外の方向けに販売も行います。一冊3,000円(送料、振込手数料は別途ご負担下さい)です。不明な点は以下のE-mailにてお問い合わせ下さい。
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26号 特集「有機化合物の安定同位体を用いた有機地球化学的研究の発展とその応用(PartT)」
(2010年12月発行)
国内天然ガスの炭素同位体地球化学(2008年度学術賞受賞記念論文) |
早稲田周 |
総説 |
宇宙地球物質に含まれる有機化合物の同位体組成に関する研究(2009年度学術賞受賞記念論文) |
奈良岡浩 |
総説 |
元素分析/同位体比質量分析計(EA/IRMS)を用いた炭素・窒素安定同位体比の測定方法とその応用 |
佐藤里恵・鈴木彌生子 |
総説 |
熱分解型元素分析/同位体比質量分析計(TCEA/IRMS)を用いた有機物の水素・酸素安定同位体比の測定方法とその応用 |
鈴木彌生子・佐藤里恵 |
総説 |
化石ポルフィリンのタフォノミー:分子レベル同位体指標としてのポテンシャルを引き出すために(2009年度研究奨励賞(田口賞)受賞記念論文) |
柏山祐一郎 |
論文 |
Vertical carbon isotope change in acetate in a surface sediment from the northwestern Pacific Ocean |
Kaneko M., Oba Y., Naraoka H. |
論文 |
微量湿式分析による分子レベル同位体比の品質管理と確度向上:特に天然存在比の正確な評価とStable Isotope Probing(SIP)法の応用に向けて |
高野淑識・力石嘉人・大河内直彦 |
論文 |
Carbon isotope biogeochemistry of acetate in sub-seafl oor sediments in the Sea of Okhotsk near Sakhalin Island,Russia |
Ijiri A., Harada N., Ogawa N. O., Sakamoto T., Nakatsuka T. |
論文 |
Evaluation of algal contribution in aquatic insects based on 13C/12C and C/N ratios |
Akamatsu F., Yamamoto M., Chikaraishi Y., Toda H. |
論文 |
Compound-specific stable carbon isotope analysis of lignin phenols by gas chromatography/combustion/isotope ratio mass spectrometry (GC/C/IRMS) |
Sonoda K., Takahashi M., Chikaraishi Y., Yamamoto S. |
論文 |
さらに26号には次の通常論文も掲載されています。
海洋堆積物中のホパンポリオールに関する研究(2008年度研究奨励賞(田口賞)受賞記念論文) |
齋藤裕之 |
総説 |
日本近海のメタン湧出点における嫌気的メタン酸化古細菌の群集組成 |
荻原成騎 |
論文 |
不飽和脂肪酸の極性カラムを用いたGC/MS 解析 |
内藤裕一・山口保彦・力石嘉人・大河内直彦 |
技術
論文 |
27号 特集「有機化合物の安定同位体を用いた有機地球化学的研究の発展とその応用(PartU)」
(2011年9月発行)
アミノ酸の窒素同位体比を用いた生物の栄養段階の解析:陸上環境を含めた生物生態系の解明に向けて |
力石嘉人・高野淑識・小川奈々子・佐々木瑶子・土屋正史・大河内直彦 |
総説 |
分子レベル安定炭素・水素同位体比の古気候研究への適用 |
関宰 |
総説 |
骨化石中のコレステロールの炭素同位体組成を用いた海生哺乳類の古食性解析の研究 |
新村龍也・沢田健 |
総説 |
火星のメタンの起源 |
藪田ひかる |
総説 |
生合成物質の分子内炭素同位体分布計測の有機地球化学的意義 |
山田桂大 |
総説 |
微生物バイオマーカーの炭素・水素同位体組成 |
金子雅紀・奈良岡浩 |
総説 |
Ecological application of compound-specifi c stable nitrogen isotope analysis of amino acids – A case study of captive and wild bears |
Nakashita, R., Suzuki, Y., Akamatsu, F., Naito, Y. I., Sato-Hashimoto, M. and Tsubota, T. |
論文 |
Stable hydrogen isotope ratios of n-alkanes in atmospheric aerosols from Okinawa, Japan |
Yamamoto, S. and Kawamura, K. |
論文 |
Methyl and ethyl chloroformate derivatizations for compound-specifi c stable isotope analysis (CSIA) of fatty acids |
Goto, A. S., Korenaga, T. and Chikaraishi, Y |
論文 |
Carbon isotope composition of bishomohopanoic acid in Miocene to recent marine sediments from the Nankai Trough (ODP Leg 190, Site 1178) |
Saito, H. and Suzuki, N. |
論文 |
さらに27号には次の通常論文も掲載されています。
炭素質隕石中有機化合物の安定同位体組成とその同位体分別プロセスに関する研究(2010年度研究奨励賞(田口賞)受賞記念論文) |
大場康弘 |
総説 |
日本の内陸湖沼堆積物における人為起源の多環芳香族炭化水素の分布について
―長野県仁科三湖と野尻湖― |
門雅莉・水本健・福島和夫 |
論文 |
ビニルポルフィリンの加熱実験による地層ポルフィリン側鎖アルキル基の伸長機構の解明 |
朝比奈健太・小川洋平・浅野純也・熊谷現・野本信也 |
論文 |
東京湾表層堆積物中のジペプチド分析 ―ジペプチドのGC/MSによる解析― |
三田肇 |
技術
論文 |
縞状チャート中に挟在する黒色頁岩中のダイアモンドイドのGC/MSによる解析 |
荻原成騎 |
技術
論文 |